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世界の地方創生: 辺境のスタートアップたち

, 松永 安光

によって 松永 安光
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内容紹介最先端は辺境にあり ローカルビジネスに挑む起業家や自治体 先進木造、村ぐるみの宿、美酒佳肴、小規模公民連携、美食とラーニング、アートビジネス、森林活用、既存ストック活用 リスクをとって、最初の一歩を踏み出した人たちをレポート 序章 スタートアップは辺境に生まれる / 松永安光 第1章 スタートアップを集める木造へのこだわり:アルプス地方 / 松永安光 第2章 廃村危機の救世主アルベルゴ・ディフーゾ:イタリアの集落 / 中橋 恵 第3章 ガストロノミーからの地域創生:ピレネー山脈南部地方 / 鈴木裕一 第4章 公共精神あふれる小さな民間事業と公の取り組み:リスボン・ポルト・山賊村 / 宮部浩幸 第5章 ガストロノミーとラーニング・ツーリズム:ダブリンとホウス / 漆原 弘 第6章 伝統的なアートとビジネスの融合:グラスゴー / 漆原 弘 第7章 森林資源の徹底活用:フィンランド森林地帯 / 鷹野 敦 第8章 衰退市街地で光る極小予算のエリア再生:台中と嘉義 / 徳田光弘出版社からのコメント地方創生の本は多いですが、世界の先端事例を「地方創生」という切り口で集めた本は初めてです。 編者はオガールの設計を担当した松永さんと北九州リノベスクールのリーダーである徳田さん。 アルベルゴ・ディフーゾ、中區再生基地など小さな、しかししっかりした一歩を自らリスクを取って進めている事例を初めて紹介します。商品の説明をすべて表示する
以下は、世界の地方創生: 辺境のスタートアップたちに関する最も有用なレビューの一部です。 この本を購入する/読むことを決定する前にこれを検討することができます。
文化人類学では、新しい文明は周縁から生まれるという説があるらしい。先端技術の研究開発を牽引する米国のシリコンバレーはカリフォルニアの辺境に立地したが、今や世界各地の辺境の其処此処に、先端技術関連企業が集積する地域を誕生させた。人口減少により地方の衰退が現実化しつつある日本では、各地方がそれぞれの特徴を活かしつつ自律的かつ持続可能な地域社会を構築することが求められている。本著は、世界各地で取り組まれている地域再生プロジェクトを概観し、集落の過疎化という難題を抱えた日本各地に、何らかの<地方創生>の示唆を与えることを目的としている。地方創生へのヒントを求めて、著者たちは欧州を中心に世界の辺境を巡る。分担執筆の形で、以下の各地における地域再生の事例を紹介している。1. スイス・オーストリアに跨るアルプス地方では、昔から森林資源を活かした木造建築事業が盛んである。近年、先端的な木造建築の技術開発が進められ、エコシステムを導入した木造オフィスが建築されている。木造8階建てのビルが建てられ、20階建てまでの実現可能性を検証している。EUの隣接国との地域交流を活かして、市場を活性化する試みも成功しているという。2. イタリアは都市国家の伝統があり、小さな村や町の自治体活動が活発という。農村の景観維持を法律化し、観光事業の活性化に努めている。過疎化により発生した空き家を、身近な観光資源と繋ぎ合わせて宿泊施設として再生している。観光事業と伝統的な食文化や地産地消を融合して、過疎化した村の活性化が実現されている。3. スペインのピレネー南麓はイスラムとキリスト教文化の境界にあり、伝統的な独自の文化を誇っている。スペインの食文化は、日本酒の酒蔵が造られるほどに多様性を許容し、美食追及の伝統は<食科学>という新しい学問領域を産んでいる。そこでは、農業経営手法、安心安全な食べ物、食材と料理法・保存法などが研究されている。食文化を旗印としたグルメ観光都市が造られ、世界シェフ会議が開催されている。4. ポルトガルのリスボンでは、都市中心部の住環境を改善する再生都市計画が進行中である。また、廃村となった都市近郊の集落を、子供や学生の合宿空間として再生した事例があげられている。無機的な工場群が占拠する企業管理地域に、カフェ、レストラン、本屋、美容室、衣料品店、住居などを誘致し、それらが融合した都市空間を産む試みも行われている。5. アイルランドでは、深刻な経済危機を克服して、人々の嗜好は豊かな生活を目指す消費活動に向かっている。例えば、食文化については、食材の仕入れ先、料理法などへの興味をもつようになっている。ダブリン郊外にテンプルバーという歴史的遺産と商業施設、住宅が混在する地域があり、観光客や地元民が多く訪れる。ここを芸術活動の中心とすべく、地元の芸術家、各種の個人商店、独創的なレストランなどを誘致した新しい都市空間の開発が行われている。漁港という地の利を利用した海産物グルメの街が紹介されている。食事を楽しむだけでなく、訪問者は当地の料理学校で料理法を体験することもできる。料理学校は専門家が料理を学ぶためのものであるが、宿泊施設、レストランが併設され、広く食文化を堪能したい訪問客にも対応している。6. スコットランドは、地政学的に欧州の辺境に位置する。ウイスキーのみならず、マックスウエル、ダニエル・ベルを産んだ叡智の故郷でもある。科学技術に加えて芸術の分野においても優れた伝統があり、グラスゴー美術大学の卒業展覧会は、さながら美術業界の人間が有能な学生をリクルートする場であるという。もちろん、ウイスキーを観光資源とする取り組みは有名である。7. フィンランドは、人口約500万人の森林国家である。材木、製紙業が国の産業を支えてきた。EU加盟を契機としてIT産業に目覚め、経済的発展を遂げている。森林資源の更なる活用を企図して、材木の付加価値を増す製材技術の革新に注力している。家具開発の他、資源活用効率を高めるバイオマス発電事業への展開も進行している。8. 台湾は、オランダ、中国、日本などによって統治された歴史をもつ。近年、エレクトロニクスやIT産業により経済発展を遂げ、国際的な存在感を高めている。<文化創意>を旗印に、古い建造物の公園空間への再利用や廃村から芸術村への再生が、事例として取り上げられている。地方創生の方向性としては、地域に存在する資源を活用して、新たな付加価値を創成することである。資源には、①漁業、農業、森林業などにおける特産物、②風光明媚な自然環境、③寺社などの歴史的遺産、④芸術村などの革新的建築と個性的生活空間、⑤自然エネルギー利用などの先端技術実験モデル、があるようだ。各地方では、これら各種資源の高付加価値化と他所と差別化を図り、地域の独自性を主張することが必要だろう。また、示された事例の多くは、地方における地域循環型の域内自律経済を目指していることも注目すべきだろう。こうした<輝かしい資源>を手にすれば、観光を始めとして人の地方への招き入れを展開することが可能になる。著者たちが指摘しているように、地方創生に特効薬的な一般解が存在する訳ではない。僻地の不便さを逆手にとって、田舎の豊かさを感じとる生活は都市空間とは異なる暮らしの在りようを教えてくれる。田舎の隠れ家的生活様式に価値を置く人たちが、新たな地域創生に繋がる可能性を産む。本書が紹介した地域再生事例が、地方創生という問題意識をもつ人たちの新たな道標となることを願う。7名の共著者たちは、外国滞在経験をもつ建築の専門家である。個別の建造物のみならず、都市空間の設計も研究対象としている。人間が生活する空間としての都市、村落の在り方を考え、衰退しつつある地域再生への方向性を示唆する。このグループが、日本の僻地を再生する具体的計画を立案し、実行することを期待する。<地方創生の夢>が実現する事例を積み重ねれば、日本全体が活性化するという大きな夢に繋がるに違いない。

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